人は「何を買うか」より、「誰から買うか」で選んでいる。
デザインの担当をしています。
連載の第4回は、プロフィールページ。メニューでも値段でもなく、あなた自身のページの話です。
デザインのご相談で、いろいろなお店のページを拝見します。写真がきれいで、メニューが整っていて、値段も明快。それでもご予約が伸びないページには、共通して足りないものがあります。それは色でも余白でもなく、「人」です。ページのどこを探しても、作っている人の顔が見えない。声が聞こえない。きれいなのに、誰もいないお店みたいなのです。
人は「誰から買うか」を見ている
大きなお店は、値段やポイントや品揃えで選ばれます。小さな商いは違います。同じメニュー、同じくらいの値段のお店が並んだとき、お客様が最後に見るのは「この人にお願いしたいかどうか」。
考えてみれば、私たちも同じ選び方をしています。美容室を変えるとき、子どもの習いごとを選ぶとき、口コミの星の数と同じくらい、「先生の人柄が良さそうで」を決め手にしていませんか。小さな商いは、人で選ばれる。だとしたら、その「人」が載っていないページは、一番の売りを隠して戦っていることになります。
完璧な経歴より、始めた理由
プロフィールと聞くと、資格や経歴を並べたくなります。もちろん資格は大事です。安心の裏づけになります。でも、人の心が動くのは、そこではありません。「なぜ、この仕事を始めたのか」のほうです。
祖母の手を借りて始めた話。自分自身が救われた経験。悔しくて眠れなかった夜のこと。立派である必要はまったくなくて、むしろ少し不器用なくらいの物語に、人は共感します。読んだ方の中で、あなたが「お店」から「人」に変わる瞬間です。
そして写真を1枚。プロの宣材写真でなくていいのです。お顔が写っているもの。照れくさければ、お仕事をしている後ろ姿や、手元だけでも。光のきれいな午前中に、作業場で撮った1枚は、それだけで空気まで伝えてくれます。顔の見えないお店の扉は、初めての方には重たいものですから。
書けない方のための、小さな型
「物語と言われても、うちは普通に始めただけで」という方へ。型をひとつ置いておきます。3つの問いに、1行ずつ答えるだけです。
前は何をしていたか。なぜ今の仕事に変わったか(または続けているか)。お客様のどんな瞬間が、いちばん嬉しいか。
「前は事務員でした。母の介護で手のこわばりに悩んだのが、ハンドケアの道に入ったきっかけです。お客様の手がふっとゆるむ瞬間が、何より好きです」。ほら、3行で、もう物語です。劇的である必要はありません。本当のことが、いちばん強いのです。
デザイン担当のひとりごと
プロフィールページは、飾らないほうが美しく仕上がります。物語と写真が主役なので、色数を絞って、余白をたっぷり。書体もページの他の場所と揃えるだけ。凝った装飾は、かえって人柄を隠してしまいます。
いちばん丁寧に整えてほしいのは、レイアウトではなく言葉のほうです。読み終わったとき、会ったことのないお客様の中に「この人、たぶんこういう人だ」という輪郭が残るかどうか。それがプロフィールページの仕上がりのすべてです。
学びはひとつ。「あなたが商品の一部」
小さな商いでは、あなた自身が商品の一部です。腕前も、こだわりも、あなたという人を通してお客様に届きます。それを載せる場所が、プロフィールページ。恥ずかしがって省略するのは、一番の強みをしまい込んだまま店を開けるようなものです。
今日の一歩
「なぜこの仕事を始めたか」を、3行だけ書いてみてください。上手に書けなくて大丈夫。むしろ、上手じゃないほうがいい。その3行が、ページの心臓になります。
次回は、いよいよ「ホームページ」の話。ここまでの1枚ものたちと、何が違うのでしょうか。