「お問い合わせはお電話で」が、お客様を逃がしている。
予約とスケジュールの担当をしています。
連載の第2回は、フォームの話。地味な道具ですが、私はこれが一番の働き者だと思っています。
先日、こんな場面に立ち会いました。あるサロンさんの予約整理をお手伝いしていたときのことです。3日前のSNSのメッセージに、「今週の土曜、空いていますか?」というご新規の方からのご連絡が、通知の山に埋もれたまま残っていました。気づいたときには、もう金曜の夜。慌ててお返事しましたが、お返事は返ってきませんでした。きっと、別のお店をご予約されたのだと思います。
誰も悪くないのです。お店の方は毎日忙しく働いていて、通知は毎日何十件も届く。でも、あの土曜の予約は、確かにこぼれ落ちました。今日は、この「こぼれ落ち」をなくす話です。
「お電話で」が、お客様を減らしている
「お問い合わせはお電話で」。丁寧なご案内に見えますが、かける側になってみると、電話は重いのです。
営業中にかけたらご迷惑かな。夜にかけるのは失礼かな。何を聞かれるんだろう。うまく説明できるかな。そう思っているうちに「また明日にしよう」となり、明日には熱が冷めている。とくにいまは、お電話そのものが苦手という方が、若い世代を中心にとても増えました。予約したい気持ちはあるのに、電話という関門の手前で、そっと画面を閉じる方がたくさんいます。
SNSのメッセージで受けるのも、先ほどの話のとおりです。届くけれど、埋もれる。大事なご予約と、スタンプひとつのやりとりが、同じ列に並んでしまうのですから。
フォームは「眠らない受付係」
フォームの良さは、24時間受け付けてくれることだけではありません。私が段取りの担当として一番ありがたいのは、聞くことを先に決めておけることです。
お名前、ご希望の日時、ご用件。受付係が必ずこの3つを伺ってくれるので、聞き漏らしがありません。「で、何日がご希望でしたっけ」「すみません、お名前をもう一度」の往復がなくなる。お客様にとっても、聞かれることが最初から見えているのは安心です。電話のように「何を聞かれるか分からない」緊張がありません。
そして、記録が残ります。いつ、どなたが、何を頼まれたか。言った言わないになりません。ダブルブッキングというのは、実はほとんどが口約束と記憶から生まれます。「あのとき電話で確かに」「メッセージで伝えたはず」。記録がひとつの場所に揃っているだけで、この種の事故は目に見えて減ります。予約の現場を見てきた者として、これは断言できます。
「自動返信」まで付けると、受付係は一人前
もうひとつ、段取り屋として付け加えたいことがあります。フォームには「自動返信」という相棒がいます。送信いただいた瞬間に、「受け付けました。2日以内にお返事します」というお便りが自動で返る仕組みです。
これがあるのとないのとでは、お客様の安心がまるで違います。送信ボタンを押したあとの沈黙は、送った側には長いのです。「届いたのかな。もう一度送るべき?」。この不安の時間を、自動返信は一通で消してくれます。しかも「2日以内に」と書いておけば、あなた自身も、深夜に慌てて返信しなくてよくなる。お客様の安心と、あなたの睡眠。両方を守る一通です。
体験レッスンのご案内や道順の地図を、この返信に添えておくやり方もあります。受付係が、ちょっとした案内係まで兼ねてくれるわけです。
学びはひとつ。「質問は3つまで」
フォームを作るとき、つい欲張って質問を10個並べたくなります。せっかく聞けるのだから、あれもこれもと。でも、入力欄が長いフォームは、途中で閉じられます。お客様は書類仕事をしに来たのではありません。
お名前、ご連絡先、ご用件。まずはこの3つで充分です。細かいことは、つながったあとの返信で伺えばいい。フォームの仕事は「すべてを聞き取ること」ではなく「ご縁の糸を、確実に受け取ること」なのです。
ちなみに、フォームの出番はお問い合わせだけではありません。すでにご縁のあるお客様から情報をいただくときにも、静かに活躍します。イベントごとの出欠やご希望を伺う。発表会の曲のリクエストを集める。お客様カードの内容を新しくしていただく。こうした「もう関係のできている方」へのフォームなら、質問が3つを超えてもかまいません。答える理由がはっきりしているからです。それでも、多すぎればやはり途中で疲れさせてしまいます。相手との関係の深さに合わせて、質問の数を決める。それがフォームの塩梅です。
今日の一歩
ご自分のページやSNSの「お問い合わせ方法」を、お客様のつもりで見直してみてください。電話番号だけが書いてあったら、それは「営業時間内に、勇気のある方だけどうぞ」と言っているのと同じかもしれません。眠らない受付係を、そろそろ雇うときです。
次回は、SNSの「リンクは1本しか貼れない」問題の、いちばんいい答えの話です。