最初に作るべきは、ホームページではありません。
今日から「スモールビジネスの道具箱」という連載を始めます。きっかけは、あるご相談でした。
「ホームページを作らなきゃとは思っているんです。でも、何十万もかかるって聞くし、作ったところで、ちゃんと役に立つのか分からなくて」
お教室を始めて2年目の方でした。SNSは頑張っている。腕にも自信がある。でも、その先が分からない。この「その先」の話を、道具ひとつずつ、ぜんぶで9回に分けてお話ししていきます。ホームページ、フォーム、リンクページ。世の中に道具はたくさんありますが、小さな商いに、なぜそれが要るのか。順番に、ゆっくりと。
第1回は、意外に思われるかもしれません。最初に作るべきは、ホームページではないのです。
LPは「目的がひとつだけの1枚」
最初の一歩に向いているのは、LPと呼ばれる1枚です。ランディングページの略ですが、言葉は覚えなくて大丈夫。中身は「目的をひとつだけ持った、縦に長い1枚のページ」。体験レッスンの申込だけ。新商品のご案内だけ。そういう1枚です。
名前の由来も、ついでに種明かしを。ランディングは英語で「着地」のこと。飛行機が滑走路に降りる、あの着地です。広告やSNSのリンクから飛んできた方が、最初に降り立つ=着地するページだから、ランディングページ。そう聞くと、このページの仕事もはっきりします。着地した方を迷子にさせず、目的地まで案内すること。それだけなのです。
なぜホームページより先なのか。理由は単純で、いま一番困っているのは「体験に来てほしいのに、案内する場所がない」という、目の前のひとつの用事だからです。用事がひとつなら、ページもひとつでいい。工事の大きい家づくりは、あとからで間に合います。
よくある失敗が、最初の1枚に全部を載せてしまうこと。メニューも、開業の想いも、地図も、お知らせも。作った方は「これで全部伝わる」と安心しますが、読む方は迷子になります。あれもこれも書いてある1枚は、結局なにも覚えてもらえない1枚になりやすいのです。
デパートの案内係を思い浮かべてください。「今日は何をお探しですか」に対して、フロアの全案内を読み上げられたら、疲れてしまいますよね。LPは逆です。「体験レッスンをお探しですね。それなら、こちらです」。その一往復だけを、丁寧にやる1枚です。
なぜ、小さなお店にこそ要るのか
大きなお店には、受付があり、案内係がいて、営業の担当者がいます。小さな商いには、あなたしかいません。あなたが接客している間、電話に出ている間、家族とごはんを食べている間、眠っている間。その間に「詳しく知りたいな」と思ってくださった方への説明を、誰が引き受けるのか。
LPは、その説明係です。しかも文句ひとつ言わず、深夜2時でも同じ丁寧さで案内してくれます。
チラシと比べてみると、良さがもっとはっきりします。チラシは、刷り直すたびにお金がかかり、配れる範囲に限りがあり、配り終えたら消えていきます。LPは、直したいときに直せて、日本中どこからでも開けて、そしてずっとそこに残る。SNSの投稿が数日で流れていくのに対して、LPは何ヶ月先も「詳しくはこちら」の行き先であり続けてくれます。
つまりこういうことです。SNSやチラシは「声をかける」道具。LPは「腰を据えて説明する」道具。声をかけたあとの説明係がいないと、せっかくの「気になるな」が、行き場をなくして消えてしまうのです。
よくある誤解。「1枚じゃ、うちの良さは伝わらない」
LPの話をすると、必ずいただく反論があります。「うちはメニューが多いから、1枚じゃ伝わらない」。お気持ちは分かります。でも、思い出してみてください。あなたが初めてのお店に興味を持ったとき、最初から全メニューを知りたかったでしょうか。
たぶん違うはずです。最初に知りたかったのは「私に合いそうか」「いくらか」「どうやって申し込むのか」。この3つだけ。全メニューの世界は、来てくださってから、ゆっくりご案内すればいい。LPが1枚で済むのは、手抜きだからではなく、初めての方が受け取れる量が、もともとそれくらいだからなのです。
伝えたいことが多い方ほど、まず1枚に絞る。この我慢が、いちばん伝わる近道になります。
学びはひとつ。「出口をひとつに」
いいLPの見分け方は、拍子抜けするほど簡単です。読み終わったとき、押すボタンがひとつに絞られていること。「申し込む」なら申し込む。「LINEで相談」なら相談。出口がひとつだから、迷わず進める。
逆に、出口が5つあるLPは、たいてい5つとも押されません。人は選択肢が多いほど「また今度でいいか」に流れるものだからです。ひとつに絞る勇気が、そのまま成果になります。
今日の一歩
いま一番売りたいもの、一番来てほしいものを、ひとつだけ決めてください。紙に一言書くだけでかまいません。「秋の体験レッスン」。それが決まれば、LPの主役は決まりです。
次回は、そのLPの出口の先で待っている道具。「フォーム」の話です。地味に見えて、実は一番の働き者なんです。