口コミは何件あればいい? 数より、続いていること。
ご相談の席で、こんな画面を見せていただくことがあります。地図に出ている、ご自身のお店のページです。星は4.8。件数は9件。「これで足りているでしょうか」と、少し不安そうにおっしゃいます。
日付を見せていただくと、9件のうち8件が去年の春、開店の週に集中していました。知り合いや常連の方に声をかけて、一気に書いてもらったそうです。そのあとの1年で増えたのは、たった1件。「あれから、誰にも頼めていなくて」。そう言って、画面を伏せられました。
星の数も、件数も、決して悪くありません。けれど私は、この画面を初めて見る「これから来るかもしれないお客様」の目になって、もう一度眺めてみました。すると、少し違う景色が見えてきます。
不安の正体は「足りているか」ではなく「信じてもらえるか」
口コミの件数を気にされる方は、たいてい「何件あれば安心なのか」を知りたがります。でも本当に気にされているのは数そのものではなく、「初めての人が、この口コミを信じてくれるだろうか」ということだと思うのです。
ここで、読む側の気持ちを少しだけ算数にしてみます。
口コミが1件だけのお店。その1件が星5つなら平均は5.0です。でも次に星3つが1件つけば、平均は一気に4.0まで落ちます。たった1人の気分で、お店の印象が大きく揺れる。読む側もそれを何となく分かっていて、「1件じゃ、たまたまかもしれない」と割り引いて見ます。
これが5件ほど集まると、1件の重みは5分の1になります。誰かが少し厳しめの星をつけても、平均はそれほど動きません。読む側の受け取り方も変わり、「何人かが同じように言っているなら、本当なのだろう」と思えるようになる。数字が安定して見え始めるのが、このあたりです。
だから「5件以上あると安心」というのは、何かの決まりというより、読む人の心が「たまたま」から「たしかに」へ変わる目安、とお考えください。
口コミは、お店の「今日の様子」を映す窓
ただ、冒頭のお店には9件ありました。件数だけなら十分なはずです。それでも私が引っかかったのは、日付でした。
口コミの一覧を上から見ていくと、いちばん新しい日付が「1年前」。読む側はここで、無意識にひとつのことを感じます。「このお店、今もやっているのかな」。
たとえるなら、口コミは店先の窓のようなものです。窓の向こうに人の動きが見えれば、通りがかりの人は「営業中だ」と安心して扉に手をかけます。ところが、窓に映るのが1年前の光景ばかりだと、どれだけ賑やかでも「昔の写真」に見えてしまう。今この瞬間に、中で誰かが笑っているかどうかが分からないのです。
一方で、件数は少なくても、先月、先々月、その前の月と、途切れずに新しい声が入っているお店があります。読む側にはこれが「今も動いているお店」に映ります。しかも新しい声は、そのときどきの空気を運んできます。「秋から始めました」「発表会の準備で通っています」。季節が流れている感じそのものが、信頼になるのです。
だから私はこう申し上げました。「一気に10件より、週に1件を続けるほうが、ずっと効きます」。一度にどっと増えた口コミは、読む側にも不自然に映りますし、そのあと止まってしまえば、窓はまた古い写真に戻ってしまいます。
頼んでも書いてもらえない、三つの理由
「続ける」と聞くと身構える方が多いのですが、実務はむしろ軽くなります。ここで、よくある誤解を三つほど。
一つ目。「頼めば書いてもらえる」という誤解。「今度、口コミお願いしますね」と言って書いてもらえた例を、私はほとんど知りません。気持ちが動いているのはレッスンや施術の直後、ほんの数分です。その数分のうちに「書ける状態」まで持っていけるかどうかで、ほぼ決まります。
二つ目。「探せば見つかる」という誤解。地図を開いて、お店を検索して、投稿ボタンを見つけて。この道のりの途中で、ほとんどの方が脱落します。慣れていない方ほど「やり方が分からなくて」で止まります。だから、投稿画面がそのまま開くリンクをこちらから渡す。それだけで景色が変わります。Googleビジネスプロフィールの管理画面に「クチコミを増やす」という項目があり、そこからリンクとQRコードが取れます。ご自身のお店の名前で検索すると管理者にだけ出てくる、あの画面です。画面の言葉は時々変わりますので、見当たらなければ「クチコミ」の周りを探してみてください。受付の壁に貼る、名刺サイズにして帰り際に手渡す。探させた時点で、もう届かないと思ってください。
三つ目。「口コミをお願いします」と言えば伝わる、という誤解。白紙を渡されて「自由に書いて」と言われると、人は固まります。でも、質問には答えられる。「どちらから通ってくださっていますか」「始める前、何がいちばん不安でしたか」。この2つを聞くだけで、書く内容が決まります。そこに「これから始める方の背中を押すことになります」と添えれば、お願いではなく協力になる。頼まれた側の気持ちが、まるで違います。
それからもう一つ。割引や特典と引きかえに書いてもらうのは規約違反です。導線を短くする、質問にする。やることはそれだけで、口コミの中身には一切手を触れません。
まず一人、遠くから通ってくださっている方へ
では、誰から声をかけるか。全員に一斉ではなく、まずは遠くから通ってくださっている方を一人、思い浮かべてください。「隣の市から通っています」という一言が入った口コミは、その地域で検索した方の目にも留まりやすいと言われています。口コミが、お店の商圏を少し広げてくれることがあるのです。
今週はその一人に、投稿画面が開くリンクと、二つの質問を添えてお渡しする。来週はまた別の一人に。前回の記事では「月に2〜3件ずつ」と書きましたが、慣れてきたら週に1件を目安に。数そのものより、途切れないことが肝心です。それを続けていくと、半年後の口コミの一覧には、月ごとに新しい日付が並びます。件数はゆっくりしか増えません。でも窓の向こうには、ずっと人の動きが見えている。
冒頭のお店の方には、9件のことはいったん忘れて「次の1件」だけを考えましょう、とお伝えしました。以前、地図の登録のお話をしたときに「口コミは少しずつ育てていく段階」と書きましたが、育てるというのは、まさにこのことです。一度に咲かせるのではなく、季節ごとに一輪ずつ。
窓の向こうで、今日も誰かが笑っている。それが伝わるお店に、人は安心して扉を開けます。