足りないのは道具ではなく、「お客様の旅」の続きでした。
連載「スモールビジネスの道具箱」、最終回です。LP、フォーム、リンクページ、プロフィール、ホームページ、ネットの棚、LINE公式、そして文章。8つの話をしてきました。
第1回の冒頭で、あるお教室の方のご相談を紹介したのを覚えているでしょうか。「ホームページを作らなきゃとは思うけれど、作ったところで役に立つのか分からない」。あの問いに、最終回でお答えします。
種明かしをすると、この連載はバラバラな道具の話ではありませんでした。ぜんぶ、一本の旅の話だったのです。
お客様の旅を、地図にすると
お客様があなたに出会ってから、常連さんになるまで。その道のりを地図にすると、6つの区間になります。
出会う。SNSや検索で、あなたを見つける。 入る。リンクページという玄関から、行き先を選ぶ。 知る。LPで「いま、これがあります」を受け取る。 信じる。プロフィールとホームページで「この人なら」と思う。 動く。フォームで申し込む。ネットの棚で買う。 また会う。LINEで繋がって、次の機会に戻ってくる。
そして、この旅のすべての区間に流れているのが、あなたの言葉でした。第8回で「すべての道具に流れる血」とお話しした通りです。
道具が足りないのではなく、旅が切れている
こうして地図にすると、見えてくることがあります。売上の悩みは、「道具が足りない」ではなく「旅がどこかで切れている」ことがほとんどなのです。
SNSはにぎわっているのに、玄関がない。だから熱心なファンほど、行き先を探して迷子になる。 LPは読まれているのに、受付係がいない。だから「いいな」と思った気持ちが、電話の重さの前で消える。 一度来てくださったのに、連絡先を交換していない。だから二度目のご縁を、偶然に任せるしかない。
切れている区間がひとつあるだけで、旅はそこで終わります。逆に言えば、直すべきはその一区間だけ。全部を作り直す必要はないのです。冒頭のお教室の方の答えもここにありました。あの方に必要だったのは立派なホームページではなく、まず玄関と受付係。ホームページは、その次で良かったのです。
旅の点検は、年に一度でいい
この地図のいいところは、一度描けば、商いの健康診断に使い回せることです。
季節が変わったとき、新しいメニューを始めたとき、ふと客足が落ちた気がしたとき。6つの区間を上からなぞって、「いま、どこが細くなっているだろう」と眺めてみる。たいてい、直すべき場所はひとつかふたつに絞れます。やみくもに新しい道具に手を出す前に、地図を見る。それだけで、お金も時間もずいぶん節約できます。
道具は増やすものではなく、旅をつなぐもの。この連載で一番お伝えしたかったのは、実はこの一行です。
学びはひとつ。「全部を一度に作らない」
だからこの連載の締めくくりは、「さあ全部作りましょう」ではありません。逆です。全部を一度に作らないでください。
ご自分の商いの旅を紙に書いて、どこで切れているかを見つける。そこの道具から、ひとつずつ。ひとつ直すたびに、旅は確実に長くつながっていきます。焦らなくて大丈夫。道具は逃げません。
私たちが Mirais を、ひとつの箱の中に道具を揃える形で作ったのは、まさにこの旅が途中で切れないようにするためです。玄関も、受付係も、建物も、棚も、連絡先帳も、同じ箱の中でひとつづきになっている。そしてどの道具も、あなたの言葉と、あなたの力を引き出す向きに作っています。
今日の一歩
あなたのお客様の旅を、6つの区間で紙に書いてみてください。出会う、入る、知る、信じる、動く、また会う。書けない区間、自信のない区間に、丸をつける。その丸が、次に作るものの答えです。
9回のお付き合い、ありがとうございました。この道具箱が、あなたの商いの長い旅の、良い相棒になりますように。