SNSは「すれ違い」。LINEは「連絡先の交換」。
連載の第7回は、LINE公式アカウント。ここまでの道具が「新しく来ていただく」ためのものだったのに対して、これは「また会う」ための道具です。
こんな経験はありませんか。イベントに出店して、たくさんの方と話して、インスタもフォローしてもらえた。手応えは十分。なのに翌月、あの日の熱がどこにも残っていない。投稿しても、あの日の方々に届いている気がしない。フォロワーの数字は増えたのに、なぜか遠い。
その「遠さ」の正体から、今日はお話しします。
SNSは、すれ違い
SNSでフォローしていただいても、あなたの投稿がその方に届くとは限りません。タイムラインは流れの速い川で、見てもらえるのはほんの一部。しかも、いつ流れてくるかはSNS側の采配次第です。
SNSでの繋がりは、にぎやかな通りでのすれ違いに近いのです。顔見知りにはなれる。会釈も交わせる。でも、こちらから「今度の土曜、いらっしゃいませんか」と声をかける手段は、実は持っていません。
LINEは違います。友だち追加は、連絡先の交換です。送ったお知らせは、その方の通知に直接届く。メールのように迷惑フォルダに埋もれることも少なく、開いていただきやすい。すれ違いの関係が、「また会える」関係に変わるのです。
なぜ「また会う」が、小さな商いに効くのか
商いの教科書がどれも言うことですが、新しいお客様に出会うには、広告費も時間もかかります。一度来てくださった方にまた来ていただくのは、その何分の一かの力で済む。
そして小さな商いの売上は、実のところ「また来てくださる方」でできています。月に一度のお手入れ、季節ごとの買い足し、発表会前の駆け込み。さらに、また来てくださる方が、お友達を連れてきてくださる。この循環が回りはじめると、商いは静かに安定します。
循環の要は、たったひとつ。「また会える連絡先」を持っているかどうかです。LINE公式は、その連絡先帳。フォロワー1万人より、連絡先100人のほうが、来月の売上に近いことは珍しくありません。
ちなみに、道具を足すともっと丁寧に
LINE公式アカウントは、そのままでも一斉送信ができて便利です。ただ、外から道具を足すと、できることの質が変わります。
お一人おひとりを、お名前で呼んでお送りする。ご予約の受付をLINEの中で済ませる。よくあるご質問に、その場でお答えする。どなたが読んでくださったかが分かる。一斉送信という拡声器が、一対一の接客に近づいていくのです。この連載の道具箱にも、その橋渡し役がちゃんと入っています。
「何を送ればいいの?」への答え
連絡先帳ができると、次の悩みは「で、何を送れば」です。答えは、売り込みではなく、お便りです。
季節のご挨拶。新メニューの試作の裏話。今月の空き枠のお知らせ。目安は「読んだ方が、ちょっと得した気分になるか」。月に1〜2通で十分です。毎週送らなきゃと気負うと続きませんし、売り込みばかりだと静かに離れていかれます。
顔の見える方に出す、短いお便り。その積み重ねが「そういえば、そろそろ行こうかな」を生みます。LINEは拡声器ではなく、文通の道具だと思って使うと、ちょうどいい距離感になります。
学びはひとつ。「連絡先は、お店の資産」
SNSのフォロワーは、正確にはSNS社からの借りものです。仕組みが変われば届かなくなり、アカウントに何かあれば消えてしまう。LINEの友だちリストは、あなたがお客様から直接お預かりした連絡先。商いの、れっきとした資産です。資産は、借りものより大事に育てる価値があります。
今日の一歩
お会計やお見送りのときに、「LINEやってます」の一言を添えてみてください。ポスターより、QRコードの札より、あなたの一言がいちばん効きます。連絡先帳は、その一言から育ちます。
次回は、すべての道具に流れる血の話。「文章」です。